木の家って感じのイメージ。
今回は、住友林業の2つの構法についてご紹介していきましょう。
住友林業の2つの構法の特徴
住友林業では独自開発した構造計算システム「WiNX(ウィンクス)」を使って建物や基礎の構造設計をしてくれます。
「WiNX」で構造設計することで、プランに応じた柱・梁・耐力壁の断面寸法や配置、基礎の断面形状や配筋の適正化を図り、一邸ごと最適な構造設計をしてくれます。
1.マルチバランス構法とは?
マルチバランス構法の特徴
- スーパー檜
- きづれパネル
- 地震エネルギー吸収パネル
この3つによって、設計の自由度を確保しながら強靭な構造躯体がつくられます。
① スーパー檜
国産檜を使用した構造用集成材の「スーパー檜」で強い柱と土台がつくられます。
集成材を構成する板材(ラミナ)をしっかり乾燥させて、含水率を15%以下にすることで、収縮や変形、割れが起きにくい安定した品質が確保されています。
「ミズダス檜」もある!
「ミズダス檜」は住友林業が開発したオリジナル木材乾燥技術の高温乾燥システム「ミズダス」でつくられた木材のことで、木材に取り付けたセンサーで乾燥状態をリアルタイムに測定し、割れや変色などが少ない寸法安定性に優れた高品質な木材に仕上げられています。
② きづれパネル
地震の揺れに耐えるには、壁面の強さが重要なので、住友林業のマルチバランス構法では、耐力面材「きづれパネル」または「Dパネル」を構造躯体の外周部に使用し、地震などの外力を受けた場合に建物の変形やねじれを抑えることができます。
「きづれパネル」は、壁倍率5.0を実現しています。
壁倍率とは?
壁倍率は、基準となる壁に対して何倍の強さがあるかを示した数値で、地震などで力が加わった時の壁の変形のしにくさが表されています。
壁倍率が大きいほど建物の変形を抑え、より大きな力に耐えることができます。
三層床構造で地震に強い床
住友林業のマルチバランス構法では、剛床パネル、シージングせっこうボード、木質フロアを組み合わせた厚さ48.5mmの三層床構造が採用されています。
地震などの横揺れの力は、水平構面の床を通じて階下の耐力壁へと伝わるので、水平構面の剛性が低いと床が湾曲して、局部的に大きな負荷がかかってしまいます。
そのため、住友林業のマルチバランス構法では、地震の横揺れによる変形を抑える強い床としています。
加力実験では、剛床パネルのみで床倍率4.51という結果が出ています。
③ 地震エネルギー吸収パネル
住友林業のマルチバランス構法では、「地震エネルギー吸収パネル」を使用し、地震のエネルギーによる建物の変形を一般的な筋かい工法と比較すると、最大約70%抑えてくれます。
「地震エネルギー吸収パネル」は、繰り返し起きる中小地震でも強さを維持し、耐震性能を発揮しつづけてくれます。
「高剛性・高減衰ゴム」でも地震の力を抑える
「高剛性・高減衰ゴム」は地震エネルギー吸収パネルに固定されています。
「高剛性・高減衰ゴム」は運動エネルギーを熱エネルギーに変換して衝撃を吸収するため、地震の揺れを熱に変えて吸収することで、住まいを地震の揺れから守ってくれます。
「高剛性・高減衰ゴム」は13トンの荷重に耐えられるので、大きな橋や超高層ビルにも使用されていて、耐久性にも優れています。
マルチバランス構法の耐震性は実験で検証済み
構造躯体の振動実験
構造躯体だけでの実質的な耐力を把握するために、実物大の試験体による振動実験が行われています。
マルチバランス構法の試験体では、阪神・淡路大震災時の最大地動加速度の1.2 倍(1,090gal)やさらに強い余震を加振したところ損傷も倒壊もなく、最高等級3の想定レベル(震度7・約600gal)を余裕で上回る耐震性が実証されています。
gal(ガル):地震の揺れの強さを表す加速度の単位 1gal=1cm/sec2
検証モデルの振動実験
実物大の検証モデルの実験では、阪神・淡路大震災の最大地動加速度の1.2倍、1.5倍を2回、2倍を7回、巨大地震を超える地震力を加えて検証されています。
結果は、検証モデルは倒壊せず、一部内装とサイディングに軽微な損傷を生じた程度となりました。
住友林業のマルチバランス構法は、巨大な地震力を連続して受けても急激な耐力の低下は発生せず、限界性能の高さが確認されています。
2.ビッグフレーム構法とは?
ビッグフレーム構法の特徴
- 梁勝ちラーメン構造
- ビッグコラム
- メタルタッチ接合
この3つによって、高い耐震性を確保し、設計の自由度を高めています。
① 梁勝ちラーメン構造
住友林業のビッグフレーム構法は梁勝ちラーメン構造なので上下階の通し柱が不要の各階の空間を自由に構成できる構造となっています。
各階の柱の位置を同じにする必要がないため、最大1.82mのキャンティレバーをつくることも可能で、駐車スペースの上を居住空間としたり、広いバルコニーをつくったりすることができます。
将来、構造を活かした間取り変更などにも対応することが可能です。
② ビッグコラム
ビッグコラムは大断面集成柱のことで、ビッグフレーム構法に必要な高い強度と優れた寸法安定性を備える主要構造材として105mm×560mmのビッグコラムを使用しています。
ビッグコラムは十分に乾燥させた板材(ラミナ)を何層にも重ねて、高い強度と優れた寸法安定性を実現させています。
これにより、ねじれや反り、割れや狂いが少なくなり、構造躯体を力強く支えてくれます。
広い開口部もつくれる
幅560mmのビッグコラムは一般的な筋かい工法の耐力壁と同等の耐震性能を有していますが、筋かい工法よりも広い開口部をつくることが可能となっています。
そのため、大きい窓や広々とした空間など、開放感のある家をつくることができます。
また、ビッグコラムは長方形柱のため、室内に柱型が出ず、室内の意匠性・機能性を高めることもできます。
③ メタルタッチ接合
メタルタッチ接合は、金属と金属で緊結することで、ビッグコラム、梁、基礎は、フィンボルトやタフボルトなどの専用の金物で接合した接合部を緊密に結合し、構造躯体を強固に一体化させます。
接合部の接点が金属相互の木造ラーメン構造というのは、住友林業が独自開発しました。
地震や強風など外からの力が伝わる接合部はすべてメタルタッチ接合になっているため影響を受けません。
柱と梁に埋め込まれたフィンボルトをねじ形状にすることで木材と接する表面積が増え、めり込みが少なく、ガタや狂いがなく従来の木造金物構法と比べても、強固に固定することが可能となっています
ビッグフレーム構法の耐震性も実験で検証済み
構造躯体の振動実験
ビッグフレーム構法の構造躯体には、巨大地震と強い余震が繰り返し発生することを想定し、合計246回の加振を実施しています。
震度4から6弱、震度7などの加振の繰り返しにも、構造躯体の耐震性が維持され続けることが確認されています。
検証モデルの振動実験
ビッグフレーム構法の3階建て実物大の検証モデルには、東日本大震災と同等の最大加速度2,699galの揺れを加振し実験しています。
阪神・淡路大震災(最大加速度818gal)の3.3倍の揺れや、東日本大震災の震度7を2回、阪神・淡路大震災の震度7を20回、合計22回加振する実験でも地震への強さが実証されています。
接合強度の検証
ビッグコラムと梁の接合強度を検証する加力実験の結果、建築基準法の最高壁倍率5.0倍/mを超える壁倍率22.4倍/m相当の許容水平耐力が確認されています。
メタルタッチ接合をFEM解析
金物に外力が加わった際にどのような形に変形するかについて、自動車や機械部品などの物体の変形の解析にも用いられるFEM解析で解析し、各種金物を設計されています。
住友林業では、ただ木の家というだけでなく、地震でも安心して暮らせる家が建てられるんです。